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2007年5月 3日 (木)

『BABEL』

Babel  正直、イニャリトゥ監督にしては、薄い・もったいないと感じた。

 どう考えたって監督の前作『アモーレス・ペロス』の方がずっと良く出来ているし、映画『バベル』で綴っている物語はどこかしら手法も含めミヒャエル・ハネケ監督の『コールド・アンノウン』の焼き直しに見える。(監督としての手腕はハネケの方が上)

 簡単なあらすじを言うなら、ブラピ一家におこった災難物語、なのである。(念を押して言いっちゃいますが、ブラピ以外、家族全員が命の存亡に関わる災難なのだ…)
なのに、この物語の背骨になる筈のブラピ一家の描き方があまりにも足りな過ぎる。
そもそもブラピが出演する意味がない。
彼の魅力も新しさも一切出てこないし、なぜかブサイクだし…。

 だから、他の地域での物語の方が人物像が描けている分、
本来主役であろう筈のブラピ夫婦の役を完全に食っている。
監督的には、それが狙いかもしれないが一番下の「?」に
書き記しているとおり、ブラピ夫婦の描き方がこの映画の
緻密さを一気に崩してしまうのだ。

 映画のなかで
言いたいことも伝えたいことも見える。
しかし、何となく薄い。
さして思いを巡らすことなく、どういう意図で組み立てた
映像なのか?はすぐ理解できるし、
何よりも監督の前作2本を見ていれば
予言の如く次の展開、いや次のシーンの画面まで
読めてしまう。う~ん、これはどういう事だ。

 ベビーシッターの甥が暴走することも、
菊池凛子がどんなに魅力的でも最後まで
男たちの性的対象にならないことも、
モロッコで悪戯に猟銃を撃ってしまった弟は特に
一挙手一投足全てが完全に先読みできてしまう。

 兄が打たれた後に警察に発砲するシーンは、
あまりにも予測していたとおりで、不謹慎だけど
笑いが出てしまった。
が、彼は煩悩丸出しの教育も受けていない幼児なのだ。
兄が撃たれたまででは、そんな急には変わらない。
防衛も含め、とっさに撃っているのだから
冷静に判断できるか?と。
いっそ、父と兄が警察に撃ち殺され、
寄る辺なく呆然とした彼のみが生き残る、
が正しい導き方だと思う。

 ラストシーンも逆だと思う。
役所公司と菊池凛子がようやく心を通わせる、
そして次に、1つ前の刑事のシーンだ。
親子2人の事に思いをはせながら
やるせない思いを抱き一人飲んでいる酒場で、
たまたま見た数秒のTVニュースがブラピ夫婦の話。が、
言いたかった事がきちんと伝わったと思う。

 しかし…、その言いたかったことは
映画の予告編で語られている
「モロッコで端を発した事件が世界の様々な人生に繋がってる」だ。
正直、それを描いたところで、「今さら」という思いが募る。
我々が既にグローバリズムの渦中にいるのは周知の事実。
衣料品のほとんどが中国で生産されているし、
家電量販店で売られている安い機器は韓国やインドネシア
などアジアの諸外国製だ。
吉野家の牛丼の肉はアメリカ産。
ほっかほっか亭ののり弁に入っているフライは
日本で白スズキと呼ばれているが現地ではナイルパーチ。
そう『ダーウィンの悪夢』http://www.darwin-movie.jp/
の主題になっている魚である。
そうした事実の上に生活が成り立っていることぐらい
知っているのだ。

 それに…、本作のタイトル『バベル』は
天まで届く塔を建てようとした人間の”傲慢”に神が怒り罰と
して、互いに言葉を通じなくしたという塔伝説。
一緒に見たダンナが「バベルの塔伝説というモチーフに
いつ行き着くか?楽しみにしていたのに、全く届かなかった」
と鋭い事言ってた。
最もだ。そう、この映画の最大のネックはこのタイトルにアリ!

 期待していた上に酒を飲みながらゆえ、
さらに辛口になりそうなので簡単に
評価したい事と「?」をば。
【評価】
日本社会の描き方が実に上手い。
(しかし、5年前の日本の姿である。東京には菊池凛子扮する
 「誰かと繋がりたい」若者は減少の一途をたどっている。
 ネットカフェ難民等、どんどん個になろうと閉塞中なのだ
 事実は小説より奇なり。日本の将来を考えると恐ろしい…)
菊池凛子はヤッパり上手い。
(ティーンの漂流感が非常に良く出てた。
 監督は菊池凛子が好きなのか?
 非常に力が入ってますね。彼女のシーンは特に)
先進国に住んでいる人々の優位性がキチンと描かれている。
(モロッコ人の兄弟もメキシコ人のベビーシッターも
 その時、本人にとって「たいしたことはない」と思った
 判断が二度と取り返しのつかない事態に陥ってしまう。
 先進国に暮らす人間とのリスクの差は著しい)
坂本龍一の音楽、いいねぇ~。私の琴線に触れるのだ。
(話の脈略と全く関係なく泣けるところなんて、ね)

【?】
・ブラピのベビーシッター手配し損ねの怪。
 電話繋がるハズなのに。
・菊池凛子の母はなぜ自殺したの?しかも猟銃で。

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『THE QUEEN』と北九州市内シネコン事情雑感

 なんでさぁ、北九州市内で独占上映しているってのに
午前11時15分からの1回しかやってないんだ『THE QUEEN』。
秀作なのに…。
嵐主演の『黄色い涙』も同じく市内で独占上映してて、
同等の扱いが当然なのに、『黄色い涙』だけ
劇場HPのタイムテーブルにも念押しで「北九州独占」って書いてある。
(つっーか、「北九州独占」って意味わかんねー)

 単館系映画を上映していることで売ってる
シネコンなのだから、運営している側の
映画的素養を問いたい気分です…。
市場の原理のみで動くことの危険性、そうした事で生まれる
現象の責任を負う意識がなさ過ぎますよ。情けない。
(ちなみに2代目までは映画のわかる支配人が運営されてました。
 初代支配人は「地方には地方の映画ニーズがある」と
 単館系の作品を上映する2スクリーンを確保し、
 質の高い映画、話題なのに今まで北九州に来なかった映画を
 次々と上映。おかげで観客動員数が西日本一という作品が
 あの頃のそのシネコンに多く生まれたのです)

 福岡市まで新幹線でたった15分。
スクリーン数と人口の対比は福岡と北九州は大幅に換わらない。
が、上映される作品の種類、本数が少なすぎる。
福岡で1年間に上映される作品のおそらく
3分の1、いや4分の1ぐらいしか北九州で上映されていない。
それも、今、見ておかなければいけない映画がかなりの本数
上映されない。昨年、上映すべきでされなかった映画の筆頭は
『麦の穂を揺らす風』。『不都合な真実』だって上映されない。
15分の差がこんなにも文化格差を生むなんて…。

 これじゃぁ人は育ちません。
お隣の国・韓国に行って見て思うのは10~20代の学生が
ガツガツと実に色んな映画を数多く見てる。
そういう環境もあるし、意識が存在している。
やっぱ真剣に文化振興策を打たなきゃいけませんね。
(ちょっとばかしやる気モード)
ま、毒はこれぐらいにしといて。

Queen  『THE QUEEN』は面白かった。
一見の価値ありです。元ダイアナ妃が、ロイヤルファミリーと決別して1年後、 フランスでパパラッチに追われた挙句、交通事故で死去。 その日から”一般人”の元ダイアナ妃が”国葬”されるまでの日々が綴られる。

 折しも、労働党の改革派トニー・ブレアが首相選で圧倒的勝利を納め、保守党から政権を奪取した直後。(ちなみにイギリスで初めてマニフェストによる首相選を行ったのがブレアなんだそうだ)

 ブレアも側近もモチロン全員が左派だから
特権階級の王室に対して疑問を抱く人々。
ブレアの妻なんて王室廃止論者だし。
一方、女王はイギリスの君主と政府両方の最高責任者と
いう役目を26歳の頃から背負ってる。
(何せ、私が女王になって、あなたで10人目の首相。
 最初の首相がウィンストン・チャーチル!!と 
 言われた日にゃぁ新進気鋭のブレアもタジタジ…)
女王の周囲はベッタリと旧態依然な保守系な人々ばかり。

 あの時の首相がブレアだったからこそ、
女王に思い切った進言が出来たんだろうし、
女王の威厳ある態度と判断に
ブレアが次第に尊敬していく…
2人の溝が埋まっていく過程が、憎いぐらい面白い。

 どこまでが事実に沿ったものなのか?わからないが、
双方の家庭環境や周辺の人物像もホントよく描けてて面白いねぇ~。
女王の夫であるフィリップ殿下も息子のチャールズ皇太子も
全く頼りにならない。
チャールズ皇太子は父親似よねぇ。
王室存続か否か?にも及ぶ大事件ってのに、
女王がダンナに相談するシーンなんて全くない。
(ダンナは次々と呑気発言ばかり。申し訳ないけど、
 フィリップ殿下の没落する姿を見たいとさえ思うよね)
皇太后のボヤく「次の世代が不安」とは
イギリス人の総意なんじゃぁなかろうか?

 イギリスを、
こうした映画をオフィシャルに作ることが
出来る健全な国と判断すべきか?
それとも英国流プロパガンダ映画とみなすべきか?
に、しても、脚本とヘレン・ミレンの快挙!
凄いですよ。うらやましいなぁ。

 少なくとも日本では、
こうした領域の映画を撮ろうという気概のある映画陣が
不在のような気がする。映画もメディアの1つなのだから
社会の健全化に貢献して欲しい。
(是枝監督、期待してます!)

 この映画、ツボにはまりましたねぇ。
強くて美しくて賢い女性が大好きなんですね、私。
勢い余って、この映画で印象に残ったこと2つ。

 女王のファッション最高です。
粋だし、その生活スタイルも含めてカッコいい。
ヘレン・ミレン自身、アカデミー賞の授賞式も
本当に美しかった!尊敬すべき女性です。
かくありたい。

 それと、女王が1人孤独に悩んでいる時の
人知れず流す涙…。
あの周辺の数分間は名シーンですね。
あぁいうシーンこそ本物の”映画”だなぁ~と。
背中を写すんですよ、背中を!!
『ゲド戦記』の宮崎ジュニア君!

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2007年5月 1日 (火)

訪ねる価値のある駅~折尾駅考~

 最初に言っておくけど、
ランキングが横行する風潮はあまり好きじゃない。
物事の真価は、基本的に自分の五感で確かめる。
現代の、過度な情報の流通によって生まれる
一般大衆文化に迎合する(みんなと同じ)のが生理的に嫌だし、
他人の意見と自分の意見の区別の付かない状態に陥り、
それに気付いていない人たちがあまりにも多く存在する現状に、
例え拙くとも、
自分の感性や意見は自分で磨いていくのが当然の事と改めて思う。

 が、唯一、気に留めて見ているランキングがある。
毎週土曜日に出る日経新聞朝刊のNIKKEIプラス1の
「何でもランキング」。http://www.nikkei.co.jp/p1/ranking/
(しかし、タイトルがそのまんまで気に食わないなぁ~)

 その道の専門家と言われる人たちがキチンと名を連ね、
評価したうえのランキングなので、無知識な自分にとって、
また、価値観が揺らいでいる現代社会の中でおおまかな指標になる。

 で、先週末のランキングのタイトルが
『訪ねる価値のある駅』。
対象となったのはJR・私鉄など国内すべての鉄道駅。
その中で何と!!日本全国のベスト10中
1位が門司港駅、7位が折尾駅!!
もの凄い快挙なのである。

 しかし…、悲しいかな
門司港駅は行政介入のもと「門司港レトロ」の
ランドマークとして保存が約束されているが、

Oriostation_1Oriokousa

 

 ”折尾駅”は駅周辺の再開発も含めて、
周辺全てを壊される可能性が高まっている。
しかも、駅の西側にある風情ある川沿いの街並みも
再開発の手にかかりそうなのである。

Rivertown あの近辺は、
以前訪れたことのある函館の街並みに少し似ているが、
観光化の手垢が付いた函館の街並みより
折尾駅舎も含め、ずっと風情や人情があり、
『郷に入らば郷に従う』本物の旅行好きが喜ぶ
観光スポットになりうる愛しい地域なのだ。

   学生向けの超安い定食屋・その名も『学生食堂』!や
市内で指折りの美味しさを誇る餃子店『餃子兄弟』、そして、
角打ちの名店・高橋酒店や宮原酒店がある地域なのだ。
再開発が進めば、駅もろともこれらの名店は姿を消す…。

Gyosa_1Gakusei_2

 

Takahasisake 宮原酒店の、労働帰りのオジさん達の集う、
あの和気藹々としたコミュニティをなぜ?
地域住民が誰も困っていないのにブチ壊そうとするのか?不明だ。

Rengabridge_1  このランキングを見て、折尾駅存続、
再開発は無意味の気運が高まってくれればいいが…。
朝倉の三連水車の二の前になったりして…。
北九州市、そんなの得意だから、ね。何せ、
国から補助金を取ってくる役人=優秀→出世する。
補助金の用途は、ほとんど土建関連である。
補助金の元金は我々の血税なのである。

 おせっかい&いらん世話でそれらの血税を使い、

小倉北区室町・紫川下流にあった飲み屋街のコミュニティ、
八幡東区荒生田商店街のコミュニティ…。
行政の手(そそのかし)によって壊されたコミュニティは
思い起こすだけで枚挙にいとまがない。
(以前、リバーウォーク北九州開業時に取材した行政のお偉いさん曰く、
 「リバーウォークを作ってやったんだから、室町は今が商機だ」と。
 仕事で数回だけしか室町の街歩きをした事がない人の発言である。)

 北九州市役所の役人のほとんどが
「誰のために、何のために」というミッションと
「誰のお陰で食えているのか?」を見失っている。
そのうえ、責任を取る事もない。少なくとも旧体制時はそうだった。

 一度無くなってしまったら、
その地域に宿る風情もコミュニティも簡単に再構築できないのである。

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